Vision API Pythonクライアントライブラリ v2.0.0リリース(BREAKING CHANGES 有り)
Vision API Pythonクライアントライブラリの新バージョン(2.0.0)が2020年9月29日付でリリースされたようです。これは以前のバージョンとの互換性を破る変更(BREAKING CHANGES)を含んでいるため、取り急ぎ現時点での影響と回避策を書きます。
【目次】
[1]v2.0.0リリースによる影響の概要
Vision API Pythonクライアントライブラリの新バージョン(2.0.0)が2020年9月29日付でリリースされたようです。
- Python Client for Google Cloud Vision(https://googleapis.dev/python/vision/latest/index.html)
これにより、バージョン指定なしで、クライアントライブラリをインストール(pip install google-cloud-vision )すると、v2.0.0がインストールされるようになっています。
また、GitHubのソースコードも最新版に置き換わっています。
- Python Client for Google Cloud Vision(https://github.com/googleapis/python-vision)
(注意)
- ここでいうv2.0.0とはgoogle-cloud-visionパッケージのリリースバージョンです。パッケージ内のvision_v1、vision_v1p1beta1、vision_v1p2beta1などのバージョン名に変更はありません。
今回のバージョンアップ(v2.0.0)は、Pythonクライアントライブラリの変更であり、Vision APIのモデルの変更ではありませんので、検出結果などが変わるものではありません。
しかしながら、以前のバージョンとの互換性を破る変更(BREAKING CHANGES)を含んでいるため、既存のプログラムをv2.0.0で動かす場合は注意が必要です。
v2.0.0の変更内容は以下を参照してください。
既にgoogle-cloud-visionのv1.0.0がインストールされた運用環境や開発環境については、喫緊の問題ではないと思いますが、Colaboratoryのように毎回新しく仮想マシンが割り当てられるような環境など、最新版のクライアントライブラリをインストールして既存のコードを動かす場合は、プログラムエラーになって動作しない可能性があります。
また、現時点(2020/10/05)では、Googleの公式ドキュメント(ガイド)にあるサンプルコードの一部はv2.0.0に対応していません。
このため、公式ガイドにしたがって「pip install --upgrade google-cloud-vision」でインストールするとv2.0.0がインストールされますが、その状態で、v2.0.0に対応していないサンプルコードを実行するとエラーで動きません。これは少々混乱するかもしれません。
本ブログの過去記事のコードや説明はv1.0.0をもとにしているため、その一部はv2.0.0には対応しておらず、v2.0.0環境ではエラーになったり、実態とは異なる説明になっている部分があります。
以下に、パッケージの内部的な変更点には触れず、v1.0.0用のコードをv2.0.0に対応させるための修正ポイントを中心に、v1.0.0とv2.0.0の違いの要点を考えてみました。
- Python >= 3.6。(Python 2.7はサポート対象外)
- リファレンス(https://googleapis.dev/python/vision/2.0.0/vision_v1/services.html )には記載がなくなっているようですが、v1.0.0と同様に、annotate_imageと特徴タイプ固有のメソッド(face_detection、text_detectionなど)も利用できます。
- 必須パラメータのみ使用して特徴タイプ固有のメソッド(face_detection、text_detectionなど)を利用している場合は、変更なく利用できると思います。
- enums と types サブモジュールが削除されています。
- 例えば、v1.0.0では、vision.types.Image を v2.0.0では、vision.Image として利用します。同様に、vision.enums.Feature.Typeはvision.Feature.Typeとします。
- メッセージのフィールド名がtypeの場合は、v2.0.0ではフィールド名の後ろにアンダーバーを付けてtype_とします。
- Feature.type => Feature.type_
- Landmark.type => Landmark.type_
- DetectedBreak.type => DetectedBreak.type_
- batch_annotate_images、batch_annotate_files、async_batch_annotate_images、async_batch_annotate_filesの引数が変更になっています。
- v2.0.0では、第一引数はRPC(.proto)の定義と同じ型である、BatchAnnotateImagesRequest 、BatchAnnotateFilesRequest 、AsyncBatchAnnotateImagesRequest 、AsyncBatchAnnotateFilesRequest に変更となっています。それ以降の引数はキーワード引数で指定するようになっています。
- v1.0.0版の第一引数で指定していたリクエスト内容は、v2.0.0では第1引数ではなく、キーワード引数として、requests=値の形式で指定します。
(追記:2021/03/13)
google.protobuf.json_format を利用して、レスポンスデータとJSONやディクショナリを相互変換する方法を、記事『Vision API Pythonクライアントライブラリを少し深堀りする(BatchAnnotateImages編)』で書きました。
しかしながら、この方法は v1.0.0では動作しますが、v2.0.0以降では動作しません。
v2.0.0以降で相互変換する方法については、記事『Vision APIのレスポンスデータとJSONやディクショナリを相互変換する(Proto Plus for Python、google.protobuf.json_format)』を参照して下さい。
以下では具体的な影響の例と取り急ぎの対応について書きます。
[2]影響の具体例
(1)annotate_imageの例
以下のコードは、最新版(v2.0.0)ライブラリリファレンス(https://googleapis.dev/python/vision/latest/index.html)のExample Usageにあるコードです。(v1.0.0のリファレンスと同じサンプルコードだと思います。)
from google.cloud import vision
client = vision.ImageAnnotatorClient()
response = client.annotate_image({
'image': {'source': {'image_uri': 'gs://my-test-bucket/image.jpg'}},
'features': [{'type': vision.enums.Feature.Type.FACE_DETECTION}],
})
このコードを元にバージョンの違いによる影響をみてみます。
なお、実際に動作を確認する場合は、image_ruiの値を実在する値、例えば、Googleのガイドのサンプルデータ(gs://cloud-samples-data/vision/face/faces.jpeg)などに変更して実行する必要があります。
①v1.0.0の場合
以下の手順で、v1.0.0を指定してgoogle-cloud-visionをインストールします。
pip install google-cloud-vision==1.0.0
そして、環境変数GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALSを設定した状態で、上記コードを実行すると、エラーなく実行できます。
②v2.0.0の場合
公式ガイドにある手順通り、google-cloud-visionをインストールします。(v2.0.0がインストールされます)
pip install --upgrade google-cloud-vision
そして、環境変数GOOGLE_APPLICATION_CREDENTIALSを設定した状態で上記コードを実行します。
すると、まず以下のエラーが表示され、停止します。
AttributeError: module 'google.cloud.vision' has no attribute 'enums'
v2.0.0ではvision.enumsとvision.types以下で参照していた内容は、vision直下で参照するように変更されています。これにより上記コードは、vision.Feature.Type.FACE_DETECTIONに変更する必要があります。
これを修正して実行しても、次は、以下のエラーが表示されて停止します。
ValueError: Protocol message Feature has no "type" field.
これは、フィールド名’type’を’type_’に変更する必要があります。
結果として、v2.0.0で動作するコードは以下のようになります。
from google.cloud import vision
client = vision.ImageAnnotatorClient()
response = client.annotate_image({
'image': {'source': {'image_uri': 'gs://my-test-bucket/image.jpg'}},
'features': [{'type_': vision.Feature.Type.FACE_DETECTION}],
})
(2)batch_annotate_filesの例
『Vision API Pythonクライアントライブラリを少し深堀りする(BatchAnnotateFiles編)/(1)ローカルに保存されたファイルを使用する』のコードをv1.0.0とv2.0.0で比較してみます。なお、batch_annotate_imagesも同様です。
①vision.typesで表現
v1.0.0のコード
req = vision.types.AnnotateFileRequest(
input_config = vision.types.InputConfig(content = binary_content,mime_type = 'application/pdf'),
features = [vision.types.Feature(type = vision.enums.Feature.Type.DOCUMENT_TEXT_DETECTION)],
pages = [1, 2, -1]
)
# batch_annotate_files呼び出し。リクエストがリストであることに注意。
batch_response = client.batch_annotate_files([req])
v2.0.0では、vision.typesとvision.enumsのtypesとenumsを削除し、Featureのtypeフィールドをtype_に変更します。また、batch_annotate_filesの第1引数をパラメータ引数(requests=)に変更します。
req = vision.AnnotateFileRequest(
input_config = vision.InputConfig(content = binary_content,mime_type = 'application/pdf'),
features = [vision.Feature(type_ = vision.Feature.Type.DOCUMENT_TEXT_DETECTION)],
pages = [1, 2, -1]
)
# batch_annotate_files呼び出し。リクエストがリストであることに注意。
batch_response = client.batch_annotate_files(requests=[req])
②ディクショナリで表現
v1.0.0の例
req = {
'input_config': {'content': binary_content, 'mime_type': 'application/pdf'},
'features': [{'type': vision.enums.Feature.Type.DOCUMENT_TEXT_DETECTION}],
'pages': [1, 2, -1]
}
# batch_annotate_files呼び出し。リクエストがリストであることに注意。
batch_response = client.batch_annotate_files([req])
v2.0.0では、vision.enumsのenumsを削除し、Featureオブジェクトのtypeをtype_に変更します。また、batch_annotate_filesの第1引数をパラメータ引数(requests=)に変更します。
req = {
'input_config': {'content': binary_content, 'mime_type': 'application/pdf'},
'features': [{'type_': vision.Feature.Type.DOCUMENT_TEXT_DETECTION}],
'pages': [1, 2, -1]
}
# batch_annotate_files呼び出し。リクエストがリストであることに注意。
batch_response = client.batch_annotate_files(requests=[req])
[3]対策例
これから新しくコードを書き始める場合と、既にv1.0.0で作成したコードがある場合に分けて、取り急ぎの対策例(回避策など)を書いてみます。
(1)新しくコードを書き始める場合
一般的には、わざわざ古いバージョンのライブラリを使う必要はないように思いますので、公式ガイドの手順に沿ってv2.0.0で作成するのが良いと思います。
ただし、現時点(2020/10/15)では、公式ガイドのサンプルコードがv2.0.0用に更新されていないようですので、上記のように動作しないコード例もあります。このあたりに注意が必要かと思います。
(text_detection、face_detectionのように、enumsやtypesをラップしている関数を利用する場合は互換性の問題は無いかもしれません。)
なお、公式ガイドのサンプルのv2.0.0対応版は、GitHubの(https://github.com/googleapis/python-vision/tree/release-v2.0.0/samples/snippets)で公開されているようです。
(2)既にv1.0.0のコードがある場合
今すぐv2.0.0にバージョンアップする必要がない場合は、以下のように明示的にv1.0.0をインストールして利用するのがよいと思います。
pip install google-cloud-vision==1.0.0
v1.0.0のリファレンスマニュアルは、以下のURLで参照できます。
なお、既存のコードをv2.0.0に対応させる場合は、v2.0.0へマイグレーションするためのドキュメントが公開されています。
- 2.0.0 Migration Guide(https://googleapis.dev/python/vision/latest/UPGRADING.html)
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